1.陰陽とは
陰陽とは、宇宙のありとあらゆる事物を陰(いん)と陽(よう)の二つのカテゴリに分類して考える、古代中国の思想です。
この世のすべての生・成・消・滅と言った変化はこの陰陽の作用によって起こり、その作用を理解することにより万物の事象を説明し、また将来までも予測しようと古代の人は考えたのです。
2.陰陽の分類について
陰と陽を分類する際には、受動的な性質=陰、能動的な性質=陽、として考えてみてください。
具体的には、火(陽)と水(陰)、太陽(陽)と月(陰)、上(陽)と下(陰)、男性(陽)と女性(陰)、剛(陽)と柔(陰)のように、相対する二つの属性を持った組み合わせからなると考えられています。
これらは相反しつつも、一方がなければもう一方も存在することはできません。
森羅万象、宇宙のありとあらゆる物は、相反する陰と陽の二気が調和して秩序が保たれると考えられます。
3.陰陽の特徴
陰と陽のバランスには、以下のような特徴があるといわれています。
①陰陽互根(いんようごこん)
陰があれば陽があり、陽があれば陰があるように、互いが存在することで己の存在が成り立つ、という考え方です。
②陰陽制約(いんようせいやく)
陰陽が互いにバランスをとるような作用です。陽と陰の各要素はお互いに依存し合いながら牽制もしています。 互いが過剰にならないよう、もう一方を抑制する働きのことです。
③陰陽消長(いんようしょうちょう)
陰陽の量的なリズム変化のことです。陰と陽はシーソーのようにバランスをとっており、陰陽どちらか一方のエネルギーが強くなれば、反対の側のエネルギーは弱くなると考えられます。
④陰陽転化(いんようてんか)
陰陽の質的な変化のことです。陰陽のどちらか片方のエネルギーが最高度に達したときに、次の瞬間にはもう一方に転化すると考えられています。
季節で言うと、夏至(夏(陽)から冬(陰)への変換点)や冬至(冬(陰)から夏(陽)への変換点)がそれに当たり、春分や秋分はその中間地点、陰と陽のバランスがちょうど1:1の時期にあたるといわれています。
⑤陰陽可分(いんようかぶん)
自然界のあらゆる事物は陰と陽の二つに分類できます。その二つの陰陽すらも、さらに陰と陽に分類できます。このように事物を陰陽に無限に分割できることを、陰陽可分といいます。
4.鍼灸と陰陽
われわれ鍼灸師はこの陰陽の考え方をベースに、陰陽のバランスがとれている状態を「健康」、バランスが崩れた状態を「病気」と考えています。
患者さんの症状を聞き、身体がどのように陰陽のバランスを崩したのかを分析し、治療法を考えていきます。