「ポストコロナの我が国の医療はどうあるのが望ましいのか」
片山さつき参議院議員をお迎えし、表題の記念講座が記念式典後に開催されました。
以下に講演内容を要約してご報告いたします。
ポストコロナでまず手がけるべきことは、景気経済対策に着手し中小企業を中心とした国民の不安の解消に努めること。医療は、今後に備えPCR検査体制の拡充及び入院ベッド数確保が必要。ただ、日本は世界有数の医療従事者数、病院数及び病床数を誇っているにもかかわらず自宅待機療養者を多数生み出した背景は、日本国民の欠点である緊急事態の観念に乏しいことが要因であり、今後生命の危機管理の徹底(地域との連携)が必要である。オンライン診療の充実、更に抗体カクテル療法の拡充、アビガン・イベルメクチンの治療薬としての可能性について言及。治療薬の開発については、今年度中に申請承認される見込みであること。ブースターワクチン接種推進の件などポストコロナのあるべき医療体制についてご講演いただきました。
ディスカッションでは、日本鍼灸師会組織率を高め、未病の分野及びコロナに対する鍼灸の力を可視化し、国・政府・医師などにポテンシャルを理解させることが重要。今後のパラメディカル、コメディカルの医療体制のあり方にも言及され、鍼灸師も参画し活躍の場を広げていけるのではと感じました。
最後に、衆議院選挙期間中の大変お忙しい中ご講演いただきましたことに感謝いたします。
「医師から見た鍼灸とICD―11」
日本東洋医学会会長 伊藤隆先生による記念講演内容をご報告いたします。
まず、漢方と鍼灸の統合医療について。ご自身の鍼灸との出合いは、知識からではなく実際に鍼灸治療を受け効果を実感したことから始まったので、頭ではなく身体で理解していることが、知識から入った他の医師とは違う点であること。また、高名な鍼灸師(師匠)から教わった刺鍼法、並びに当時の治療器具を写真を交えて紹介された。補瀉の治療法で治療効果が上がらない中、接触鍼と出会ったことで視野が広がったことも紹介されました。
さて、伝統医療使用国は1999年25カ国、2018年には98カ国に大幅に増加しにもかかわらず、日本には伝統医療を統括する行政部局がない現状を危惧され、また※アメリカ2023年問題も提示されました。ICD-11ついては、第26章「伝統医学の病態-モジュールⅠ」に、経絡病症など収載された点に触れられ、更なる研究が進むことを期待すると共に、伝統医療と西洋医学のダブルコーティングが医療全体の理想である。今後の漢方と鍼灸の活躍のフィールドは広く、医療(治療)・介護・福祉を通しての社会貢献を視野に入れ、医師とのコミュニケーションを密に行う必要性を述べられました。
最後に、ICDは改訂を繰り返すため次回改訂期までに伝統医療の成果が伴わなければ削除の可能性がある。成果を上げるためには、①日鍼会・全日学で鍼灸治療に関するデータバンクを作成しデータ集積すること ②データの研究を行い、進歩させること を、そして最重要課題として ③それを継続させること をあげられました。
継続的に研究を続け、成果を世界に発信し続けることが、鍼灸及び漢方医学が世界に認められる近道だと。
※アメリカ2023年問題
2010年にECFMG(外国の医学部卒業生のための教育委員会)が発表した「2023年までにWFME(世界医学教育連盟)のグローバルスタンダード認証を受けていない大学の卒業生には、アメリカの医師免許を取得させない。」というもの。
岡田 賢